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世界一小さな「桜島小みかん」のGI登録とブランド力を活かした取り組み

 

鹿児島県のシンボルである桜島は、鹿児島市の東方にある活火山で県内でも人気の観光スポットとなっている。かつては錦江湾に浮かぶ島であったが、大正3年の大噴火で大量の溶岩が流れ、大隅半島と陸続きになった。現在も噴火を繰り返し、周辺地域に火山灰を降らせている。

桜島の土壌は、噴火の産物であるボラ土(軽石)で排水性・保水性ともによく、空気を含むことで保温性もあり、島内では、かんきつ類はもちろん、ギネスに登録されている世界一大きな「桜島大根」も生産されている。

「桜島小みかん」(通称:島みかん)は、江戸時代から既に桜島で栽培されていたといわれ、徳川幕府に献上されていた記録が残っており、「桜島蜜柑」と呼ばれ一級品として珍重されていた。

大正3年1月12 日の大噴火でほとんどの「桜島小みかん」が枯れてしまったが、生き残った木もあり100本近い古木が現在も点在している。最も古い木の樹齢は推定220 年以上で、幹周り縦12.4 m、横10.2 m、高さ6.2 mもある木が存在しており、なかには1本の木から24,649個、1,065.7㎏収穫されたという記録もある。

 

小粒で甘い「桜島小みかん」

桜島西北部の扇状地は水はけがよく、傾斜と錦江湾からの反射で日当たりもよいため、みかんを育てるのに最適な環境である。

「桜島小みかん」は“みかんは小つぶ 甘さは大つぶ”というキャッチコピーで販売されており、果実の直径が5㎝足らずで重さは1個当たり50g程度であることから“世界一小さなみかん”ともいわれている。また、果皮は薄く、果肉は柔らかく、酸味が少なく甘いのが特徴で、手の平にすっぽり入るサイズである。

生産に携わるのは、桜島柑橘ハウス振興会の会員111 人で、屋根掛けハウス(1,839a)で先代から受け継いだ木を守り続けている。摘果・施肥などの基本管理を徹底し、L・M玉を中心に大切に育てることで、冬季の1ヵ月間(12月のみ)しか販売されない希少価値のある高品質な果実に仕上げている。

 

降灰との戦いは産地の宿命

桜島の火山灰は農家にとって悩みの種となっており、特に夏場は東風が吹くため、鹿児島市街地に火山灰が降り注ぐ。そこで、降灰対策として、ハウスの上部だけがビニールで覆われている屋根掛けハウスを設置した。

特に平成25年の夏には、桜島の昭和火口で爆発的噴火があり、噴煙が5,000 mまで上昇し鹿児島市街地にドカ灰と灰雨(灰混じりの雨)が降り注ぎ、辺りは灰色一色となった。屋根掛けハウスにも灰がこびりつき、日照不足の影響が懸念されたことから、積もった灰を2、3日かけて取り除くなど、降灰との戦いは産地の宿命となっている。

 

GI登録で桜島を活性化

「桜島小みかん」は、全国各地の伝統食材を残す「故郷に残したい食材100選」(平成16年度農林水産省地域食文化発掘・普及事業)に選ばれ、K-GAP認証(かごしまの農林水産物認証制度)のもと、平成20年5月には「かごしまブランド産地」の指定を受けている。

知的財産への取り組みとしては、平成21年4月に「地域団体商標」を取得、平成29年11月には「地理的表示保護制度(GI制度)」に県内では2番目(農林水産物としては県内初)に登録された(登録第46号)。収穫したみかんは、光センサーで選果され、一定の基準(糖度11度以上など)を満たしたもののみが、GI産品「桜島小みかん」としてGIマーク付きで出荷される。GI登録初年度の平成29年産は約120tが全国に出荷された。

今回の登録を受け、JAグリーン鹿児島の村山組合長は「国のお墨付きという付加価値を得ることができ、生産者はもちろん、桜島の活性化にも弾みが付くと期待している。今回の登録は終わりではなくスタート。『桜島小みかん』の魅力・ブランド力を活かし、高品質な果実を全国に届けるため、生産者への支援と『桜島小みかん』の維持拡大に努め、次世代につなぐ、桜島の自然に負けない元気な産地づくりをめざしたい」と語っている。

 

着色が早い「紅さくら」

平成25年には、桜島柑橘ハウス振興会の下部組織として、紅系桜島小みかん「紅さくら」部会が設立された。在来種「桜島小みかん」の枝がわりとして結実した「紅さくら」は、糖度が高く、在来種に比べ着色が早いことに加え、果皮の紅が濃くなり、フレッシュな強い香りが特徴である。「紅さくら」は「桜島小みかん」の優良系統のひとつであるため、GIマークを付けて販売している。

JAグリーン鹿児島では、部会の設立を契機に、在来種や中晩柑などの老木園や生産性の低い品目から「紅さくら」への転換をすすめ、生産基盤の強化に取り組むこととしている。初年度の27年度は1,000本を会員に配付し、29年度までに3,000本が定植され、共販量200t、販売額1億円が保持できる産地づくりをめざし、取り組みを進めている。

 

生産者の新たな収入源を生み出す

年明けに選果する果実は、あまり需要がなく販売価格も安くなるため、通常、市場出荷は行っていない。そのため、着色が遅れた「桜島小みかん」は、加工用として利用している。平成26年夏のサイダー「桜の雫」誕生を皮切りに、サントリーのご当地ハイボールや宝酒造のチューハイ「寶CRAFT桜島小みかん」、UHA味覚糖の代表商品「ぷっちょ」など、つぎつぎと商品が誕生している。このような形で「桜島小みかん」の美味しさを全国に発信することで、少しずつではあるが生産者の所得向上につながってきており、今後も、企業とのコラボ商品の開発を進め、「桜島小みかん」の雰囲気を味わえる商品を全国に届けたいと考えている。

 

今後の課題

年々生産農家が離農するなど厳しい状況のなかで、JAでは管理作業を軽減するために桜島地区果樹農作業受託部会を立ち上げた。部会メンバーたちは、ビニールの被覆など高齢者に負担がかかる作業を手伝いながら生産農家の確保に努め、新規就農者の支援も行っている。今後は、栽培面積の拡大と出荷量の安定に努めながら、広く消費者にGI制度を周知し「桜島小みかん」を後世につないでいきたいと考えている。


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