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JA鳥取いなばにおける「鳥取砂丘らっきょう」のGI登録とブランド化への取り組み

 

JA鳥取いなばが全国に誇る「鳥取砂丘らっきょう(生)」は、厳しい気象条件や痩せた土地でも育つ特性を持ち、ほかの作物の栽培に向かない同地において、地元の農家が自家用に栽培してきた歴史のある農産物である。

古くは、大正初期に設立された産業組合が、この「らっきょう」に目をつけ、鳥取砂丘で本格的に栽培したのが始まりである。

 

GI制度に寄せる期待

平成24年、農林水産省は「地理的表示保護制度研究会」を設置してGI制度の検討をスタートさせ、論点が整理された直後の研究会において、地域の実情や課題を探るための産地ヒアリングが実施された。

そこに招かれたJA鳥取いなばは、平成17年に商標を登録した「砂丘らっきょう」が、19年に無断使用されたことを報告し、「このGI制度が、より強い産品の差別化・ブランド化に結びつくことを期待する」という意見を述べた。

 

JAグループでのGI制度の検討

JAグループでも、全中を中心にGI制度の検討が開始され、模造品への対策、品質と伝統性の確保、産地の発掘と求心力を高める必要性、また、特に登録時に重要な特徴・特性についても検討することとなった。

こうしたなか、伝統性や模造品への対策といった検討の観点は、らっきょうに合致する部分が多くあり、さらに本格的な栽培から100年というタイミングでもあったことから、産地の鳥取市福部町では100周年記念大会を開催し、「『鳥取砂丘らっきょう』ブランドをいっそう高めていこう」という機運が高まっていた時期であった。

 

関係者全員の合意により登録申請

鳥取県では、JA鳥取県中央会が平成26年7月、県内のJAを集めた会議を開き、GI登録申請を希望するJAを募集した。JA鳥取いなばでは、過去に商標の無断使用や模造品の販売対策に苦慮した経緯があり、産地のブランド化に取り組むうえで課題意識を持っていたため、この募集に手を挙げた。

平成26年8月には関係者を集めて現地検討会を開催。GI制度については、出席者のほとんどが全く知らない状況であったが、「登録に向かうためには、GI制度と今後のめざすべき姿について共通の認識を持つ必要がある」と考え、出席者のすべての疑問に答える形で会議を進め、関係者全員の合意が得られるまで議論を重ねたうえで、正式に申請手続きを行った。

 

申請書の作成などGI登録までの経過

申請にあたって関係者が大変苦労したのが、申請書の作成、特に「農林水産物の特性」と「特性がその生産地に主として帰せられるもの」の項目であった。

「鳥取砂丘らっきょう」は、他産地のらっきょうに比べて歯触りがよく、「シャキシャキして色が白い」ということで知られていたが、これを特性として登録するには、客観的な根拠の提示が求められた。

「他産地とどこが違うのか」「どのように証明するのか」が問題となり、補足する文献を探したり、らっきょうの破断試験を行ったりと、関係者の協力と努力で困難を乗り越えることができた。その結果、JA鳥取いなばは、平成27年6月1日に農林水産省で行われた申請受付式に出席する運びとなり、同年11月の公示を経て、28年3月10日に「鳥取砂丘らっきょう」がGI登録(登録番号11号)された。

 

登録後が未来に向けてのスタート

平成27年6月に発足したGI制度は、国が産品の特性を保証し、通報などにより取り締まりの行政命令が出せるなど、従来にはなかった画期的な仕組みである。これを推進していくことは、地方創生の農業分野における目玉政策となりうると感じており、認知度が高まれば、第1次産業が主力の地方にとっては、農林水産物が地域のトップブランドとして全国に波及し、産品が売れることで地方経済の活性化が図られるものと考えている。

今後の課題としては、産地がこの登録を契機に発展し、継続した農業生産につなげていくためにも、ビジネスモデルの構築が必要だと感じている。また、GI制度自体の知名度が低く、まだ国内で定着していないことも課題としてあげられる。GIマークを見ても、ピンとこない消費者が数多く存在する現状では、GIブランドの知名度をいかに高め、消費者に「鳥取砂丘らっきょう」をアピールし、農業所得向上につなげていくのかが、今後の大きな課題である。

そのためには、申請主体(当JA)による継続したブランド戦略の取り組みが必須であり、消費者の本物志向に対応できる産品をつくり出し、これを国がGI産品として認定していくことが重要である。

私たちJA関係者は「登録できて万歳」ではなく、「登録後が未来に向けてのスタート」であると思っている。幸いにして、登録初年度の平成28年は作柄がよく、「鳥取砂丘らっきょう」の販売額が初めて10億円を突破(10億7,000万円)したことは、特筆しておきたい(図-1)。

現在、JA鳥取いなばでは、「鳥取砂丘らっきょう」以外の産品でも申請を検討しており、申請中の「鳥取砂丘らっきょう(加工)」(漬物)と合わせて、早期に公示・登録となること、また、GIの認知度が高まり、真の意味で、国からのお墨付き(水戸黄門の印籠)となることを期待している。


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