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果樹王国が誇る「東根さくらんぼ」のGI登録および行政とJAが一体となった取り組み

 

東根市は、山形県の中央部、村山盆地の乱川扇状地に位置する農工一体のまちである。同市は「おいしい山形空港」(山形県が命名した山形空港の愛称)をはじめ、新幹線の停車駅、高速道路のICが所在する交通の要衝で、工業製造品出荷額は県内2位となっている。一方、水はけのよい扇状地は果樹の生産に適しているため、1年を通じてさまざまな果物を楽しむことができる「果樹王国」でもある。

明治の初めから果樹栽培が本格化した東根市は、さくらんぼの主力品種「佐藤錦」発祥の地であるとともに、日本一のさくらんぼ生産量を誇っている。

そんな東根市のさくらんぼが、平成29年4月「東根さくらんぼ」として地理的表示(GI)保護制度に登録【農林水産大臣登録第30号、登録生産者団体:果樹王国ひがしね6次産業化推進協議会】された。東根市と近隣市町の一部を産地とし、一定の栽培基準や出荷基準(秀・L以上)を満たしたものがGI産品となる。このGIマークが付された高品質な「東根さくらんぼ」(佐藤錦・紅秀峰)の出荷が本年6月から開始された。

 

さくらんぼ栽培に最適な東根市

東根市は、さくらんぼをはじめ、りんご、もも、ラ・フランス、ぶどうなどの果物栽培が盛んであるが、そのなかでもさくらんぼの生産量・生産額は群を抜いており、東根市の農業をけん引する存在である。

明治時代、内務省により苗が全国各地に配布され、試作が始まったさくらんぼは、現在、産地が数ヵ所に限られていることからもわかるとおり、気象条件・地理的条件・土壌条件を選ぶ品目である。

一般的に昼夜の寒暖差は果樹の生育によい影響をあたえ、果実は甘味を増すとされている。東根市は昼夜の寒暖差が大きく、果実成熟期である6月の平均日較差が12℃(平成27年)と大きいことから、果物栽培に適した地域となっている。また、6月は梅雨と重なるが、当地域は比較的降雨量が少なく日照時間が長いことも、食味に好影響をもたらしている。

さらに、奥羽山系の乱川扇状地をはじめ、白水川、村山野川などの河川によって形成された水はけのよい土壌(礫質褐色低地土など)は、排水と通気性を好むさくらんぼ栽培に適している。土壌水分が少ないことが甘味につながり、さわやかな甘さと程よい酸味のバランスに優れた良食味のさくらんぼ生産を可能としている。

 

「佐藤錦」の歩みと新品種「紅秀峰」

明治期のさくらんぼは、酸味が強い黄色い果物だったが、大正元年(1912年)、佐藤栄助氏による品種改良(甘味と酸味のバランスがよく、赤い果実)が成功。昭和3年(1928年)には、市内で種苗生産を行っていた岡田東作氏が「佐藤錦」と命名し世に広く出された。

昭和50年代後半頃から、パイプハウスの屋根部分をビニールで被覆する「雨よけテント」が普及したこと、またトラック輸送網や輸送手段などの条件整備が進んだことにより、課題であった日持ちの問題が克服された。

さらに、現在では「佐藤錦」と他品種を掛け合わせた新種も続々と誕生している。その代表が「紅秀峰」で、大粒で甘味が強く、パリッとした食感が特徴である。

 

行政とタッグを組んだプロモーション、まちづくり

現在の東根市は「一行政一JA」体制にあり、行政とJAが一体となったプロモーション活動を積極的に行っている。

JAさくらんぼひがしねでは、「佐藤錦」の品評会を毎年開催しており、平成29年度はGI制度への登録を記念して東京・築地市場で品評会を実施した。品評会には当JAの組合長と東根市長が出席し、「東根さくらんぼ」

をPRした。品評会後に行われた競りでは、1㎏パック詰めの部門で最優秀賞を受賞した「佐藤錦」に30万円の高値がつき、大いに盛り上がった。

さらに東根市では、さくらんぼにこだわったまちづくりに取り組んでいる。JRの駅としては全国的にも稀である、果物の名前が入った「さくらんぼ東根駅」をはじめ、市内のいたるところに「さくらんぼ」を冠した施設がある。また、参加ランナーが1万2,000人を超え、東北最大級の規模となる「さくらんぼマラソン大会」や「さくらんぼ種飛ばしワールドグランプリ」なども東根市を代表するイベントとなっている。

このほかにも、行政とタッグを組んだトップセールスを展開するなど「一行政一JA」の利点を活かした活動を行っている。

 

担い手不足対策として無料職業紹介所を開設

山形県内の産地に共通する問題であるが、東根市もその例にもれず、農業の担い手不足が深刻だ。ここ数年は、豊作に恵まれているさくらんぼだが、労働力不足により収穫しきれない事態が発生している。その打開策として、当JAでは平成27年に無料職業紹介所を開設し、生産者に労働者を斡旋している。取り組み3年目となる今年度は、山形県外から働きに来る方が労働者全体の半数を占める結果となり、県外まで広く目を向けた求人活動の必要性を感じさせた。今後は、GI登録された「東根さくらんぼ」のブランド力が、求人活動の強力なアイテムにつながることが期待されている。

 

「東根さくらんぼ」の輸出量はまだまだ伸ばせる

「東根さくらんぼ」は海外の食卓も彩っている。平成29年度は、タイ・台湾・香港の3ヵ国に合計223.6㎏のさくらんぼを輸出したが、当JAのさくらんぼ取扱量が約1,335tであることを鑑みると、輸出量をまだまだ伸ばせる余地があることがわかる。国がその品質を保証するGIマークは、輸出の際にも産品の差別化を打ち出すうえで有利となることが期待されている。

今後、「東根さくらんぼ」の輸出量をさらに伸ばしていくには、GI制度への登録を契機とした産地を挙げた高品質化に向けた意識の醸成、さらなる取り組みが必要と感じている。


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