• 知財農業TOP
  • 地域団体商標制度
  • 地理的表示(GI)保護制度
  • 農業に関する知的財産
  • 知的財産活用事例紹介

JAふくおか八女におけるGI制度を活用した高級茶生産の取り組み

 

八女茶(やめちゃ)の歴史は、1423年が始まりとされ、香り高く、甘い味わいを持つ高級茶として評価を得ている。

平成28年度の八女茶の生産量(収穫量)は、1,870t(全国:80,200t)で全国の茶生産量の約2.3%を占めている。また、面積は5番目、生産量は6番目である。

GI登録を受けた「八女伝統本玉露」の平成28年度生産量は約11tである。生産条件は、①茶樹の枝を収穫後に1回だけ剪定し、秋まで自然に芽を伸ばす「自然仕立て」②茶樹を16日以上、稲わらなどの天然資材で覆う「棚被覆」③ていねいに新芽を摘む「手摘み」という3つの伝統技法である。これに適した土壌や気象条件などが結びついた産品として、「八女伝統本玉露」は地理的表示保護制度(GI制度)に登録された。

 

危機感から生まれた地域一丸でのブランド化推進

手摘み玉露は、労力と経費が嵩むため、高品質・高単価をめざした技術の向上が図られた。この取り組みの成果として、平成元年以降28回開かれた「全国茶品評会」玉露の部で日本一を20回獲得し、国内外から高い評価を受ける産地となった。しかし、高齢化や労力不足がネックとなり、生産量の確保が懸念された。

そこで、八女伝統本玉露推進協議会(事務局:JAふくおか八女)が主体となって、日本緑茶で最初にGI制度の登録を受け、国の内外でさらなるブランド化の推進を図った。

茶については、主に荒茶を生産する農家(JAふくおか八女茶業部会)と最終商品を仕上げ・販売する茶商が一体となってGI認証の取得に取り組む必要があった。八女地域では、GI登録前から「『八女伝統本玉露』を残さなければ八女茶は生き残れない」という危機感が、生産者と茶商に共有されていた。検討を行う都度、産地の関係者全員の意識が高まり、県や市も後押しする生産・流通・行政一体のブランド化推進体制ができ上がった。

 

GI登録で高まった生産・流通の結束力

GI登録によるブランド化推進にあたっては、多数の構成員(生産者、仕上げ・袋詰め販売業者)が生産工程管理業務を確実に履行するよう勉強会や講習会などを何度も開催した。

また、さらなるブランド化のために、JA全農ふくれん茶取引センターに上場された11tの「八女伝統本玉露」のうち、特に最高級で希少価値のある13,000円/㎏以上の単価の荒茶のみにGIマークを付けることとした。

現在のところ、茶商の協力もあり、GIマークを付けることができる「八女伝統本玉露」の数量は若干増加した。しかし、この「八女伝統本玉露」が“福岡の八女茶”全体の消費拡大につながるような消費者の反応はそれほどみられない。一方、GI登録により、メディアなどへの露出度が確実に高まり、「八女伝統本玉露」は八女茶全体のブランド化をけん引する重要なアイテムとして期待が高まっている。今後、われわれが主体となってこのメリットを活かす方法を検討する必要がある。

現時点におけるGI取得の最大のメリットは、産地の内部体制が強化されたことであろう。「八女伝統本玉露」を生産する農家や販売する茶商が、改めて八女茶の課題や問題点を見つめ直すきっかけとなり、振興方策の共有化が図られたのである。

 

茶を軸に「八女」ブランドを国内外へ発信

福岡県の茶生産地域は、起伏や高低差があるため、大規模・省力の生産方式が成立しにくいという側面がある。このため、小規模な茶園(煎茶園を含む)でも高収入を得ることができる高級茶生産に特化してきた。

一般的に売りにくい商材とされる高級茶だが、それを求める消費者は少なからずいる。茶の消費が厳しさを増しているが、幸い産地のサイズが小さくフットワークがよいので、確固たる日本一の高級茶産地をめざし、関係者全員が茶に携わる喜びを感じるよう継続して腰の据わった取り組みを行うこととしている。

また、これまでEUやアメリカなど海外市場へも積極的に八女茶を輸出してきたが、GI登録という“本物の品質の証”をいただいたので、さらなる戦略強化を図っていく。

JAふくおか八女管内は、いちご(あまおう)、電照ギク、ぶどう、みかん、キウイフルーツなど、多様な農産物を多く生産し、福岡県内でも有数の農業地帯である。

これらの農産物をPRする方策のひとつとして「産地名を売る」ということも重要である。このため、「八女」という言葉の露出を多くし、地域農産物全体のブランド化に貢献したいと思っている。

さらに、「八女」には提灯、仏壇、手すき和紙、石灯ろうなど、地域に根づいた伝統工芸品があるので、「八女」の地名を前面に出し、地域に根づく産業全体の活性化を図っていきたい。

 

GI登録農産品の産地連携で認知度向上を

GI制度は、まだ国の内外で認知度が低い状況にある。GI登録農産品を持つ全国各地のJAなどが連携し、この制度の認知度を高めて盛り上げていく必要があると感じている。今後、ますます数多くの農産品がGIの登録を受けることと思うので、国や関係機関のご支援を期待する。


ページトップへ