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圃場で完熟させてから収穫する「江戸崎かぼちゃ」品質統一に向けたJA部会の活動とGI登録

 

「江戸崎かぼちゃ」は、茨城県稲敷市江戸崎地区を中心に生産されている。この地域の土壌は火山灰層(関東ローム層)で、排水性がよく、年間を通じて適度な降水があるため、過湿に弱いかぼちゃの生産に適している。完熟で収穫することで、甘味がありホクホクとした食感となり、同地域を代表する作物のひとつとなっている。このかぼちゃを生産するJA稲敷江戸崎南瓜部会(以下、部会)は、26戸の農家が28haで年間約450tの「江戸崎かぼちゃ」を生産している。作型は大型ハウス・トンネル・露地栽培の3タイプがある。収穫時期は二つに分かれ、春ものが5月下旬から7月末で、抑制栽培が11月下旬から12月上旬となっている。
以前から産地一丸で品質向上に取り組んできた「江戸崎かぼちゃ」は、GI登録を機に知名度も向上。茨城産農産物の“顔”として市場や消費者からの厚い信頼を寄せられている。

 

放置かぼちゃが奇跡を生んだ
「江戸崎かぼちゃ」の生産が始められたのは昭和41年頃のことだ。この地域では、もともとすいかの栽培が盛んだったが、周囲のすいか産地に押され、思うような販売ができなかった。そんなときに青果市場の助言もあって、7戸の農家がかぼちゃの栽培にチャレンジした。しかし、特徴がなかったせいか販売が伸びず、収穫せずに畑に放置されていたという。この放置したかぼちゃをある生産者がひとつ食べたところ、驚くほどに「甘い!」「うまい!」ことに気づき、「これなら売れる!」と確信した。この奇跡的なかぼちゃとの出会いから、今の部会が誕生した。部会は「良品に安値なし」を合言葉に、良いものを栽培すれば高値で販売できるという思いで活動を再開した。

 

部会一丸で品質・出荷管理
思わぬ出会いから、完熟したかぼちゃ、美味しいかぼちゃづくりに向けて試行錯誤の栽培が始まり、約5年の歳月をかけて受粉後から最適な収穫日数を見つけ出した。一般的なかぼちゃは、着果後45日程度で収穫し貯蔵庫などで追熟するが、部会では「江戸崎かぼちゃ」を、原則として着果後55日以上圃場で完熟させてから収穫すると定めた。
また、各部会員の品質統一に向けた活動として、全部会員をチーム編成して作型ごとに全圃場を巡回し、着果調査を実施している。その結果により作型別の出荷時期を想定する。収穫推定日の直前には採果調査を実施し、役員が圃場ごとに採果するかぼちゃを決めて持ち寄り、全部会員の前で試割りをして完熟度合いのランク付けを行っている。これにより、生産者が少しでも早く出荷したいという気持ちから、未熟のかぼちゃを収穫することがないよう全員の目で確認し合うことができる。さらに、圃場ごとに日々の出荷数量を割り振ることで正確な出荷計画をつくることが可能となり、市場からの信頼を得て有利販売へとつながった。

 

実った努力、消費宣伝
部会一丸での努力が実り、江戸崎地区は、昭和57年から始まった「茨城県青果物銘柄産地」制度の初年度に指定を受けることができた。これは、高品質で信頼性・安全性が市場で高く評価され、県を代表する青果物産地を育成・指定する制度である。
産地の信頼を維持するため、現在は一元集荷が実現し、出荷時には検査員がすべてのかぼちゃを手に取り、外観の色つや・キズ・大きさなどを確認している。検査の結果、A品になれるのは全体の6割程度。平成に入ってからは、A品のなかでも厳選されたかぼちゃをお中元などの贈答用として、化粧箱に収めて出荷を始めた(2個入り3.2㎏前後)。手頃な大きさが好評で、年間約6,000箱が取引されている。
一方、部会では「江戸崎かぼちゃ」のPRにも力を入れている。「江戸崎南瓜音頭」やキャラクター「パンプちゃん」を作成し、毎年16~17店舗のスーパーで消費宣伝を行っている。部会員自らが調理したかぼちゃを売場でお客さまに試食していただき、「ホクホクして美味しい」などの評価を直接聴くことで、今年も喜んでもらえたことを実感。文字どおり生産者、消費者双方の顔が見える販売を展開している。

 

GI登録が販促の原動力に
平成27年に地理的表示保護制度が施行され、「江戸崎かぼちゃ」は、第6号として最初の指定を受けることができた。GI申請によるメリットのひとつは、地域が一体となって取り組んできた「江戸崎かぼちゃ」の栽培方法や品質管理が、ほかのかぼちゃと違うということが、地理的表示の定義により明確になったことである。以来、TV・ラジオをはじめとする各メディアで毎年取り上げられたおかげで、多くの皆さまに「江戸崎かぼちゃ」を知っていただき、GIマークを付した産地として販売を促進することが可能となった。新たな取り組みとしては、化粧箱をリニューアルし、2個入れに加えて1個入れの箱もつくり、より多くのお客さまに対応できるようにした。また、年間を通して「江戸崎かぼちゃ」を味わっていただけるよう、加工品の開発に着手したほか、子どもたちがかぼちゃを好きになってくれることを願い「江戸崎南瓜音頭」に続くソング「えどさきかぼちゃのうた(仮)」の作成にも取り組んでいる。

 

着々と進む産地拡大
GI登録により農家の生産意欲も高まり、GI登録の祝賀会では、部会長から「将来的には面積を拡大し海外輸出も検討していきたい!」との決意表明があった。また、遅れていたGAPの取り組みも、部会青年部が中心となって勉強会や現地検討会を開くなど活動が始まっている。
今後の課題としては部会員の高齢化と後継者不足があげられる。GI登録は、これまで個選出荷をしていた管内のかぼちゃ農家に対して部会の加入を促し、すいかの後作として「抑制かぼちゃを一緒につくろう」と地元農家へ呼びかけるきっかけとなった。その結果、平成28年は抑制かぼちゃの生産量を拡大することができた。
また、新規就農者の受け入れも茨城県・普及センターとともに行っている。平成29年は1家族を受け入れ、部会役員の指導により独り立ちしてかぼちゃ栽培ができるよう支援している。しかし、農業を一から始めるには、栽培技術だけでなく農地を探し農機や道具を揃える必要がある。新規就農者には安定して農業を営める資金を含めた環境づくりが必要であり、行政とJAが連携して対応できるよう努力していく予定だ。
今後、GI制度の知名度向上が、新たな起爆剤となることが期待されている。


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