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地域とともに育む「三島馬鈴薯」ブランド力の強化と生産振興の取り組み

 

静岡県JA三島函南管内にある箱根山西側の丘陵地は、馬鈴薯、にんじん、かんしょ、はくさい、レタスなど、多種多様な野菜を生産する少量多品目の産地である。関東ローム層からなるこの地域は、肥沃な土壌に恵まれ、古くから良質な農産物が生産されてきた。

JA三島函南では、少量多品目の産地の特徴を活かし、標高50m以上で栽培する野菜を「箱根西麓三島野菜」と定義づけて平成24年に商標登録し、ブランド化と販売力の強化に努めてきた。その代表格である「三島馬鈴薯」は、全国に名を広めた「みしまコロッケ」の原料であり、6次化産業の立役者として所得向上に大きく貢献している。

今号では、当JAが農協自己改革の主要重点項目として取り組んだ農畜産物のGI制度取得による「三島馬鈴薯」ブランド力強化と生産振興について紹介する。

 

「三島馬鈴薯」ブランド力の原点は完全風乾貯蔵

箱根西麓地域は、耕土が深く柔らかい水はけのよい土壌で、根菜類の栽培に適している。「三島馬鈴薯」の歴史は古く、昭和20年代から栽培され、地域の特産品として名声を高め、今日に至っている。

しかし、栽培地は急傾斜地にあり、大型収穫機を導入することができないため、収穫はひとつひとつ丁寧に手掘りで行われてきた。そのため、馬鈴薯の表面に傷がつかず肌が美しい。

「三島馬鈴薯」の特徴は、手掘り、天日干し、土落とし、風乾貯蔵を経て、全国主要産地の端境期の6月中旬からわずか3週間のみ出荷する生産工程にある。また、収穫から2週間程度、風通しのよい冷暗所で完全風乾貯蔵を行い、しっかりと熟成させることが最大の特徴である。これが甘みとしっとりとした食感を生み、保存性を高めている。食味のよさと優れた保存性は市場からの評価が高く、同時期の他産地のメークインと比べても2~5割程度高い単価で取引されている。

 

「みしまコロッケ」で地域を巻き込んだブランド推進

「三島馬鈴薯」のブランド化に向けた取り組みは、商工会議所と行政が連携し地域を巻き込んで展開されてきた。「三島馬鈴薯」を原料にした6次化商品「みしまコロッケ」は、ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で2大会連続の入賞を果たした。これを機に、「みしまコロッケ」は全国に名を広め、地元に愛される食材として三島市を中心に150店舗以上で販売され、地域をあげてのブランディング活動の機運が一気に高まった。

「みしまコロッケ」の定義は「三島馬鈴薯(メークイン)」を100%使用し、仕入先を確認することで認定される。三島市の特産物として「みしまコロッケ」がテレビ、新聞などのメディアで数多く取り上げられ、それと同時に原材料である「三島馬鈴薯」の需要も一気に高まった。原料となる馬鈴薯はB品を利用するが、単価は1㎏当たり133円と通常の2倍で取引され、その結果、生産者の収益底上げの要因となり、所得向上に大きく貢献している。

JA三島函南では、高まるブランド化の波に乗り他産地と差別化を図るべく、平成23年に「三島馬鈴薯」を地域名称と商品名称からなる地域団体商標制度に登録した。その後、「三島馬鈴薯」を核とした地域ブランド推進の動きがさらに活発化し、平成27年にはJA、生産者、三島市、商工会議所などの関係機関が構成メンバーとなる三島市地域ブランド推進協議会を発足させた。毎年7月1日を「三島馬鈴薯の日」と定めた解禁イベントをはじめ、大手企業・コンビニエンスストアとの商品開発や市内学校給食への無償提供などを実施し、地域を巻き込んだブランド推進へ発展した。

 

地域団体商標から地理的表示保護制度の取得へ

高まるブランド化の一方で産地としての課題も浮上してきた。「三島馬鈴薯」はメークインが使用され、箱根西麓地域の透水性、排水性、通気性、保水性など極めて優れた土壌で栽培され、出荷期間も6月中旬からわずか3週間と限られている。そして、最大の特徴は、前述した手掘り、天日干し、土落とし、完全風乾貯蔵の段階を踏む生産工程にある。

こうした高いハードルがあることから、JAグループ以外の個人出荷や儲け主義に走る一部の店舗で、生産地や生産工程を偽る不正表示や不正使用が散見されるようになった。「三島馬鈴薯」は生産者、JA、三島市、商工会議所など地域のこだわりとブランド意識の共有から確立されてきた、いわば“宝物”である。そこで三島市地域ブランド推進協議会では、この「三島馬鈴薯」について、生産地、生産工程を国が厳格に管理する「GI制度」取得に向けて動き出したのである。

 

厳格な生産工程管理記録でブランド力の強化へ

JA三島函南では、平成26年からGI制度取得に向け三島市と連携して準備を進め、28年10月に全国で18番目にGIを取得した。GI制度では、生産する農産物の生産工程管理記録が義務づけられる。取得後、生産者は生産工程を記録し、JAにも記録簿を管理するなど煩雑な事務作業が課せられる。しかし、生産地、生産工程の厳格な管理は「三島馬鈴薯」ブランド力飛躍の要であり、さらなる高付加価値を生み出す起爆剤と確信する。

農産物のブランドづくりに大切なことは、食材のストーリー性と産地を支える地域愛にあると考える。「三島馬鈴薯」がGI制度を取得できたのは、生産者、JA、三島市、商工会議所がひとつになり、「みしまコロッケ」を通じて地域全体で育んできたブランディング活動の成果である。今後もGI制度取得による「三島馬鈴薯」のさらなるブランド力強化に地域とともに努めていきたい。


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