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「夕張メロン」のGI登録とさらなる差別化への取り組み

 

「夕張メロン」栽培の起源は、大正12~13年頃までさかのぼることができ、昭和5年頃には、数種の栽培も試みたが、十分な糖度が得られずに立ち消えとなり、当時の食糧事情から、次第に減少し戦争の激化とともに消え去っていった。

戦後の夕張農業は、戦前と同様、雑穀・豆類・一般野菜中心の経営で農業所得も低く、農外収入によって生計を立てていた。こういった時代背景のもと農業での自立安定を図るには、夕張市の狭い地形では収益性の高い農作物を生産するしかなかった。そこで、メロンの栽培が真剣に見直されることとなり、新しい品種の研究、育成が再開された。

昭和35年4月、17名の有志により夕張メロン組合が設立され、数々の試験栽培を繰り返し、同年現在の「夕張キング」(一代交配種)が誕生した。こうして長年の悲願であった新品種が作出されたことにより、夕張市のメロン栽培の方向づけがなされた。作付け、栽培、選果、出荷を一元的に管理する生産組合と農協が一体となって取り組んだ結果、昭和40年から50年頃には北海道を代表するメロン産地へと成長をとげたのである。

それから約40年の時を経て、JA夕張市では、先人たちが築いてきた「夕張メロン」のブランド力をさらに高めるために、GI制度への登録を行った。今号では、GI登録までの経緯とその成果を中心に紹介する。

 

安定した品質と優れた味わい

「夕張メロン」は、昭和35年のスタート当初から一元出荷全量体制を確立し、品質の安定化は他に類を見ない産地として高く評価され、54年から全国初の産地直送をスタートさせ、日本中でその名が知られるようになった。

「夕張メロン」は、父親「スパイシーカンタロープ」と母親「アールスフェボリット」の一代交配種で、昭和36年に品種名「夕張キング」と命名された。

一代交配種は、父親と母親の優れた性質を、その子一代に限り発揮する遺伝学上の特性を利用した品種である。果肉は、オレンジ色で繊維質が少ないことから非常に柔らかく、ジューシーであり、瑞々しさや口に広がる甘さと芳醇な香りを持つメロンである。

 

GI登録申請に至った経緯

GI登録の申請に至ったきっかけは、主に次の3点である。

第一のポイントは「国が『夕張メロン』にお墨付きをあたえる」ということの意義である。国が認めた産品を栽培している生産者たちは、そのことを誇りに思い、特に若い生産者にとっては長く「夕張メロン」をつくり続けていくうえで励みになると考えた。

第二に、JA夕張市では、地域団体商標制度が開始される以前から、「夕張メロン」を苦労の末に商標登録し、独自にブランドを守ってきた。その商標数は150件にも上る。そのうえで、「夕張メロン」という産品に国がお墨付きをあたえ、模倣品に対する保護をしてもらえるこの制度は、仮に訴訟になった際も負担がなく、市場流通においてもさらなる差別化が図れるものと期待し、申請をするに至った。

また、3年前から海外への販促を進め、海外に対する商標はアジア圏の一部の国で取得していたものの、模造品被害が発生した際、訴訟費用などの負担は莫大なものになるのと同時に、調査が難しい状況であることは理解していた。そうしたなかで、このGI制度は、日本国と他国の相互保護協定が結ばれた国では、GI産品が保護されるということも申請のメリットである。

申請の作業は比較的スムーズに進んだ。これは、当JAが五十数年培ってきた栽培技術の蓄積と夕張市との結びつきの強さがあったこと、そして何より「夕張メロン」の品種管理方法と検査体制をはじめとする組織づくりができていたからに他ならない。また、GIサポートデスクなどから申請書の作成方法などについてアドバイスをいただいたことも助けとなった。

こうして平成27年、「夕張メロン」はGI登録されたのである。

 

海外への販促成功に期待

販売先については、常に国内消費の向上をめざしているが、前述したとおり、3年前から試験的なものを含め海外への販促にも取り組み始めた。

国内では、先人の苦労と努力により、現在では「夕張メロン」ブランドとして多くの方々から評価いただいているが、海外ではまだ道半ばであり、思うような成果には至っていない。今後、成果をあげるには、販売戦略を根本的に見直すことが最優先事項になる。GI登録を受けたことは、海外への取り組みを行ううえでは「国からのお墨付き」をあたえられたということであり、さらなる販路の拡大と海外での「夕張メロン」の認知度向上に期待が膨らむ。

 

登録後の効果と模倣品対策

GI登録後に行われた平成28年の「夕張メロン」の初競りは、例年以上にメディアから注目を集め、過去最高額で落札いただき、文字どおり最高のスタートを切ることができた。

さらに、GI登録となったことで、生産者とわれわれJAの関係は登録前と変わらないものの、GI登録されたことで「『夕張メロン』は地域との結びつきが強い産品である」ことが、改めて明確になったといえる。そして何より「夕張メロン」の品質、ブランド価値の向上への意識と責任が高まり、今まで以上に生産と販売に努力していかなければならないと再確認ができたことが大きな効果としてあげられる。その効果は、次年度以降のさまざまな取り組みに現れてくると考えている。

また、海外での模倣品については、できる限りの対抗措置として、商標登録の出願を行っており、アジア圏の数ヵ国で取得している。商標登録については、取得するのに莫大な労力・時間・費用がかかり、登録後も、模倣品への対抗措置をとるには、大変な労力を要する。

平成28年度にはタイで「夕張メロン」の模倣品が横行し、さらに香港でも流通していることが確認され、ただちに対抗措置を講じることになった。農林水産省は、GIの不正使用に当たるとして、生産業者に警告状を送付し、名称を使用しない旨の誓約書を提出させることに成功した。今後も農林水産省は、各国とGI登録産品の相互保護協定を締結し、産品の保護にあたるとしており、模倣品流通など不正使用の防止策として期待が持てる。

 

宣伝活動で地域を活性化

「夕張メロン」がGI登録を受けたことを多くの方々に知ってもらうため、これまでポスターなどの販促物や広告に可能な限りGI制度の説明文やGIマークを付け、認知度の向上に取り組んできた。しかし、消費者はもちろん、「夕張メロン」販売を担う市場関係者でさえも制度を知らないという現実に直面し、GI制度に対する全体的な宣伝不足を痛感している。今後、国による積極的な宣伝活動が実施されれば、より多くの人たちがGI制度を知ることで新たな販路が広がり、さらには地域の活性化につながるものと考えている。


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