付加価値増大に向けた地理的表示保護制度(GI制度)の活用
地理的表示保護制度(GI制度)とは
全国には、長い年月をかけて培われた特別な栽培・生産方法やその土地の気候・風土・土壌など自然の特性を活かした生産により、高い品質と評価を得ている産品が多く存在する。
地理的表示保護制度(以下、GI制度)は、国が、そうした産品の名称を品質とともに登録し、知的財産として保護する制度で、平成27年6月1日から運用が開始された(図-1)。
GIに登録されると、「GIマーク」(図-2)を付けることができ、ほかの産品との差別化が図られるほか、基準を満たす産品のみが市場に流通することが可能となる。
また、不正使用があった場合には、行政が取り締まりを行うこととされている。
平成29年1月現在、17道県の24産品が登録されており、多くの産品にJAが関係している(図-3)。さらに、GI制度の活用を検討しているJAが、全国で100を超えるなど、各地で申請・登録に向けた取り組みが進められている。
GI制度に取り組む意義
近年の農畜産物の販売をみると、量販店のバイイングパワーが強くなる傾向にあり、生産から流通まで、全体で低価格競争を招いている状況にある。
また、欧米などの先進国を中心に、ブランド化された高品質な農畜産物があるなかでは、国産の農畜産物が、品質のみで国内外の市場競争に勝ち続けていくことは困難である。
こうした現状において、JAグループが国内外の市場で優位性を持続的に獲得し、さらなる農業所得の増大を図るには、GI制度を活用して、産品や地域のブランド化を進める必要がある。
GI制度で期待される効果
GI制度は、世界100ヵ国以上で導入されており、とりわけEUでは、1992年に加盟国全体に制度が導入され、現在1,200件以上の農産物・食品が登録されている。
欧州議会による調査では、GI登録産品は、一般品に比べて小売価格が2.23倍高いという結果も出ており、例えば、フランスのブレス地方で生産されるブレス鶏は、一般の鶏肉に比べ、小売価格が4倍となり、サプライチェーンにおける小売価格の配分をみても、生産者への利益配分が7%上昇している。
わが国でも、GI登録をきっかけに、報道される機会の増加や取引の拡大、価格の上昇、担い手の増加など、幅広い効果が現れ始めている(図-4)。
GI登録をしたJAの評価
実際にGIを取得したJAからは「地元の生産者の苦労に報いるべくブランド力を高めたい」「産地の供給体制の発展や規模拡大に向けて挑戦したい」「新規就農者の呼び込みに積極的に取り組んでいきたい」といった声があり、生産者からは「さらによいものをつくるために気を引き締めて頑張りたい」「世界中に地域のGI産品のブランドが広がってほしい」といった声もあがっている。
JAがGI取得をめざす目的は①産品の差別化による付加価値の増大②生産者の所得向上③担い手の育成・確保④伝統的な栽培方法の保護⑤輸出の拡大など、さまざまであるが、その目的に応じてGI制度が戦略的に活用されている。
GI制度の積極的な活用を
わが国は、国土の約7割が中山間地域であり、欧米のように大規模で効率的な農業を行うことは難しいが、それぞれの地域で、自然と共生した多様な農業を営み、伝統・文化・気候・風土などをふまえた、豊かな特性を持った多様な産品が生産されている。
身近にあって、その価値を見逃がしがちな地域資源・産品の掘り起こしを進めることは、JAや生産者が、地元特有の伝統・文化・気候・風土などにあらためて気づくことにつながり、付加価値を見出すことにもつながっていく。
GI制度は、まさにそこに着目した制度であり、「第27回JA全国大会」では、付加価値の増大と新たな需要開拓への取り組みとして、このGI制度を積極的に活用していくことを決議している。
ぜひ、全国のJAで、GI登録に向けた挑戦に第一歩を踏み出していただきたい。